ヤンヤン夏の思い出



台湾を代表する映画監督、エドワード・ヤンが台北に住むごく普通の中流家庭の人々の日常に起こる様々な事件と、彼らが織り成す人間模様を描いたヒューマン・ドラマ。祖母が突然脳卒中で倒れてから、姉は隣家の少女のボーイフレンドと付き合いだし、母は新興宗教に入って山にこもり、父は昔の恋人に再会し、人生のやり直しを考え始めた。そしてヤンヤンにも気になる女の子が現れ・・・。カンヌ映画祭監督賞受賞。(原題:A ONE AND A TWO・・・)
〔製作〕河井真也、附田斉子
〔監督・脚本〕エドワード・ヤン(楊徳昌)
〔撮影〕ヤン・ウェイハン(楊渭漢)
〔音楽・美術〕カイリー・ペン(彭鎧立)
〔出演〕ジョナサン・チャン(張洋洋)、ウー・ニエンチェン(呉念眞)、エレイン・チン(金燕玲)、イッセー尾形  ほか(2000年・台湾/



「世界はとても複雑そうに見えて、実際はとても単純なんだ」

 カンヌ映画祭で賞をとった作品らしいですが、なるほど、カンヌが好きそうな映画だなぁと。ハリウッドじゃ興行収入が見込めない映画です。時間がゆるやかに流れていって、非日常な出来事も起こらない、音の静かな物語。3時間近く有りますから、友人に見せたら間違いなく途中で眠ります。


 が、そういう映画がかなり好きな私にとっては、そりゃあもうジャストミートなわけで。十二分に堪能させて頂きました。
 兎に角、映像が私好みの色合いで。台湾の真夏のオレンジ、濃い緑、空の青とプールの水。音はほとんど無に等しいのに、台湾の喧噪が聞こえてきそうです。外界の音が本当に無い映画。サイレントな部分もかなりあります。昔の日本映画の臭いもします。
 映像の撮り方も、ちょっとおもしろいです。直接人物を撮るのではなく、ガラスに映ったその人を撮るわけで。新幹線などで、ふと窓を見ると自分の顔が写るじゃないですか。その窓を撮るんです。そうすると外の景色と部屋の景色と人物が重なるんです。ちょっと見にくいですが、おもしろいなぁ。


「真実の半分だけ見ることが出来る?」
「どういうことだ」
「だって、前は見えても後ろは見えない」



 題名は「ヤンヤンある夏の思い出」ですが、主役はヤンヤンというより、ヤンヤンとその家族、といった感じです。主にヤンヤンの父親と姉とヤンヤンの三人の視点からの日常が描かれています。

 ヤンヤンは女の子達にいじめられているちょっぴりどんくさい少年。どんくさいから、学校の先生にも目をつけられている。おとなしいですが、時折しゃべる言葉が妙に哲学じみています。最後の締めも彼の言葉でした。同級生の女の子より身長が低い可愛い子。

 ヤンヤンの姉は女子校にかよう少女。濃い緑の制服に白いソックスがまぶしい(笑)彼女の着る普段着は清楚な感じのものが多いです。祖母が脳卒中で倒れたのは、自分がゴミを出し忘れたからではないかと悩まされ、それでも山籠もりに行った母の代わりに家事を賄う頑張り屋。失恋、友人との亀裂を乗り越え「現実はどうして夢のようではないの」と嘆きつつ「それでも世界は美しい」という彼女は将来いい女になって欲しいです。

 ヤンヤンの父は会社の副社長。莫大な損失を出した会社をなんとか回復させようと日本のゲームクリエーターの大田と契約しようとしている、見た目は普通のまさに凡庸な男性。なんの取り柄もない人ですが、とてもいい人。日本人なら草薙くんあたりがやりそう。このお父さんとヤンヤンの会話が何気に好きです。初恋の彼女と再会してまた青春がやり直せるかと思ったけれど、結局何も変わりはしなかったというあたり、 だめだめですが、旦那にするならこれくらい堅実なひとがよいかと。

 で、その大田がイッセー尾形さん。この人、一人芝居のイメージが強いんですが、もの凄く、映像にとけ込んでいました。典型的な日本人を演じるわけでもなく、かといって奇をてらった目立ち方も無く。強いて言うなら、言葉の一言一言が格好いいです。「同じ日は二度と来ない。毎日が新しい。それなのに何故人は恐れるのか」「私は貴方と同じでトリックは無い。。けれども貴方の会社は私にマジシャンを求める」血気盛んな訳ではなく、淡々と語るあたりがクールだなぁ。NJ(ヤンヤンの父)と話すとき、日本語と英語がちゃんぽんになるところがなんだか親近感がわきます。


「Life is beautiful!」

 そして肝心要の健次郎さん。そりゃあもう目を皿のようにしてかぶりつきで探しました。でも結構簡単に見つかりました。

 自分のつんちょウオッチャースキルに一片のくもりナシ!

 大田とNJの会合に使った居酒屋の店員です。凄いです。科白があります!だってですよ。日本の出演者で科白があるのは、イッセー尾形さんと、ホテルのシーツ取り替えのおばちゃんと健次郎さんだけですよ!(あと、「こんにちは」というあいさつをした通りすがりのひと) いやもう、声で一発ですね。
 顔はそんなにはっきりとは分かりませんでしたが、髪はちょっと長いです。喜安さんの映画に出ていたときくらいですか?2シーン有りました。
 一つは、大田が店員(つんちょ)にトランプを借りるとき。

大田「トランプかしてくれないかな」
店員「賭事はだめなんですが」
大田「しないよそんなこと」
店員「じゃあ何に使うんですか?」
大田「お酒二本よろしくね」
店員「・・・はい」

 はぐらかされおってからに!!(貧血)
 作務衣が似合っているのか似合ってないかよく分かりません。

 二つ目は、大田とNJの席に料理を運んでくるシーン。
 料理をテーブルに並べながら
「賭事はしていませんね・・・・・・・・・・・どっちが勝ちました?」

 疑り深いやつめ!!(夜中に絶叫)
 こいつ絶対ギャンブル好きだ。稼いだお金全部ギャンブルにつぎ込んでいるんだ。そして、バイトを掛け持ちしているに違いない!

 シーンはほんの数十秒なのにインパクトは「あきら」にも引けはとらないかと。「風花」より全然多いですわ。


 いやあ、いつ出るかいつ出るかどきどきものでした。

 全体の話としては、

 結婚式に始まり、葬式で終わる

 と、いった感じでしょうか。おばあちゃまが、粋な方でした。


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